GTR法による歯茎・歯肉再生治療
顎の骨や歯根膜などの歯周組織の再生治療の一つであるGTR法についてまとめました。メリット・デメリット、費用、他の治療法との違いを紹介します。
GTR法とは?
GTR法とは歯周組織誘導法とも呼ばれており、歯周病の悪化によって溶けてしまった顎の骨や歯根膜などの歯周組織の再生を促す治療法です。
溶けた歯槽骨の治療では、歯槽骨が自然治癒によって再生するよりも、周囲の歯肉が再生するスピードのほうが早いため、歯槽骨が再生するスペースを歯肉が覆ってしまうという問題点がありました。 GTR法は、メンブレンと呼ばれる人工膜を歯槽骨が溶けた部分に挿入して覆い、歯周組織が再生するためのスペースを確保するという治療法で、口腔内を清潔に保ちながら、人工膜の下で歯槽骨がゆっくり再生するのを待ちます。個人差はありますが、数か月程度で新しい歯槽骨と歯根膜が再生されていきます。
GTR法の治療の流れ
- 麻酔をして、治療する部分の歯茎を切開します
- 歯根の表面に付着している歯石やプラークを除去します
- 人工膜(メンブレン)を挿入して歯槽骨が溶けてしまった部分を覆います
- 切開した歯茎を縫合して、2週間ほどしたら抜糸します
- 経過観察をしながら歯槽骨が再生されるのを待ちます
GTR法の費用
GTR法の治療は保険適用されるようになり、1歯で5,000円~1万5,000円程度で治療が受けられます。しかし、保険適用される人工膜が限られるので、保険治療を行っているクリニックは少ないのが現状です。 人工膜には、除去が必要なものと、吸収性で除去の必要がないものがあります。自由診療の場合は、1ブロック(すべての歯を6つに分けたブロックの1つ)で、5万円~15万円くらいになります。
GTR法のメリットとデメリット
メリット
- 歯肉の再生によって歯槽骨が埋まるのを防げる
- 時間をかけて再生した歯槽骨は、ほぼ元の状態になる
- 保険診療で安く治療できる場合もある
- 比較的広範囲の治療にも適している
デメリット
- 歯槽骨が溶けた範囲や症状によっては、治療が適さない場合もある
- 人工膜を挿入して元通りに歯茎を縫合するのが困難で、高い技術が必要になる
- 非吸収性の人工膜の場合は、歯槽骨が再生してから再度歯茎を切開して除去する必要がある
- 歯槽骨が再生するのに時間がかかる
- 人工膜を挿入してあるため、すきまから細菌が侵入して、歯周病が悪化する可能性がある
GTR法とエムドゲインとの違い
人工膜を挿入するGTR法よりも新しく進んだ歯周組織再生療法として、エムドゲインが浸透しつつあります。
エムドゲインは、歯茎を切開して溶けてしまった歯槽骨の部分に、タンパク質である薬剤を塗布するだけの治療なので、GTR法よりも手術が簡単で歯槽骨の再生スピードも速いという利点があります。しかし、エムドゲインは狭い範囲のみなど治療できる条件が狭く費用も高めなので、ご自身の状況に合わせて適した治療法を選んでください。
GTR法がおすすめの方
広範囲に歯槽骨が溶けてしまっている方
人工膜で歯槽骨が失われている部分を覆うことができるので、広範囲の治療も可能です。GTR法は時間はかかりますが、確実に少しずつ再生していきますし、歯肉の高さを引き上げて見た目でも気になる歯茎下がりを改善できます。
できるだけ安く治療できる保険診療を受けたい方
GTR法は、保険診療が認められたため、安いところでは1歯5,000円程度から治療が受けられます。手術が難しいことや使える人工膜が限られていることから、保険診療を受けられるクリニックは限られていますが、何よりも治療費を安く済ませたい人は、保険診療できるクリニックを探してみてください。
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